耳鳴りは外側からの刺激がないにも関わらず、何かしらの音を感じる状態で、原因が明らかにされていないケースも多く、治療が難渋してしまうことがあります。耳鳴りの不快感により、夜眠れなくなったり、イライラがひどくなってしったり、このまま治らないのではないかという不安を抱えるケースも多くあります。ストレス状況下では更に耳鳴りが悪化してしまうというケースも見られます。急性症状が起きた場合、慢性化してしまわないように西洋薬による治療は欠かせないものですが、それでも改善が見られない場合に漢方薬での治療が功を奏する場合もあります。今抱えている症状が良くならずに不安を感じている方は、是非漢方での治療もご検討ください。
耳鳴りの種類
- 拍動性耳鳴り 心臓の鼓動と一致している耳鳴りで原因としては貧血や動脈瘤、脳動静脈瘻(のうどうじょうみゃくろう)
- 非拍動性耳鳴り 鼓動とは一致しない耳鳴り。
- 自覚的耳鳴り 本人にしか聞こえない耳鳴り。聴覚中枢までの聴覚路に障害が生じているケースや耳垢、水、小さな虫やゴミが外耳に入ることで起きるケースもあります。
耳鳴りの原因
音は外耳道→鼓膜→中耳→内耳→脳神経→脳幹→大脳の聴覚野へと伝わります。この経路を「聴覚路」といい、電気信号が伝えられることで音と認識するのですが、耳鳴りはこの聴覚路のどこかに障害が生じて発生すると考えられています。
耳鳴りと難聴
片側だけ耳鳴りがする場合、耳に何かしらの異変がある場合が多いのですが、両側で起きている場合は加齢や騒音が原因となっていることもあります。
耳鳴りの一般的な治療
内耳の機能を改善するために、ビタミンB12製剤や、ステロイド剤、血管拡張剤、血流改善薬などが使われることがあります。また、不安感が強い人には抗不安薬や、耳鳴りにより鬱症状が見られる人には抗うつ剤などが処方されるケースもあります。
(症例)50代女性
X年7月に来店
X年6月突発性難聴と診断。
耳鼻科でステロイド治療を受けるも、効果なし。右耳がプールに入った時のように詰まっている感覚がある。じーっと蝉が鳴いているように感じる。きっかけは環境変化と恒常的なストレス。右耳がうるさくて眠れなくなってしまった。環境変化に伴う不安感が強かった。
同時期、お腹に激痛が走る。痛みは現在なくなったが、お腹の張りを感じる。それ以来食事は気をつけている。胃腸炎が怖くて食べる量が減る。前ほど食べたいと思わない。逆流性胃炎 朝起きた時に胃がもたれていることもある。ポリープ既往歴あり。
肩こりは常にある。夜中に一回目が覚める。夜間尿は週に2回くらい。コロナでリモートワークをし、体力は落ちている。運動なかなかしていない。子供二人いる(17歳 12歳受験で神経を使う。)排便2日に一回。口渇あるが量はあまり飲めない。手は冷たいところを触っていたい。下半身は冷えている。頻尿(1日10回)
処方
煩熱や皮膚の乾燥、夜間尿、頻尿などの症状から「地黄」を中心とした処方を考える。口の乾きがあるがあまり飲めないことなどを踏まえて陰虚と捉える。
また胸脇苦満こと、腹部の痛みが以前あり、芍薬・甘草・枳実・柴胡の処方を選ぶ。
上半身の熱症状と下半身冷え症状、尿不利、肩こりがあることから桂皮・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬の処方を選ぶ。
3週間後経過
胃の痛み、耳鳴り、睡眠の質ともに改善。現在健康への不安から漢方での治療を継続中
考察
耳鳴りの漢方治療には「地黄」を中心とした漢方薬が用いられることがあり、有効率が67%あるとの報告もあります。漢方医学では耳は腎に属し、腎が充実していることで耳を正常な状態に保つことができます。地黄を中心とした処方は、「血管弛緩作用があり、抹消循環を改善することで、加齢に伴う腰痛、冷え、しびれに効果を示す。」(日本東洋医学会雑誌 第74巻 第3号 2023年 P225 平澤一浩 塚原清彰 著 より抜粋)とされています。今回は、煩熱や皮膚の乾燥、夜間尿、頻尿などの症状が正に「地黄丸類」の症候と合致したことから改善が見られたと考えられます。また、ストレスによる胃腸が動かなくて張るなどの症状が見られたことから柴胡剤と、上熱下寒や瘀血が見られたことから桂皮剤を用いて治療しました。症状が良くなったものの、健康への不安があることから現在も加療中です。
最後に
耳鳴りがする、耳が聞こえなくなった、このような症状はある日突然やってくるものではありません。何か少しでも違和感を感じたら、まずは受け止めて病院で検査をしてもらいましょう。万一、原因が分からなかったとしても未病に対し漢方薬での治療が功を奏することがあります。また、西洋医学で症状が改善できなかった場合にも漢方薬などの代替補完医療は効果を発揮することもあるため、是非漢方での治療も視野にご検討ください。治療を始めるまでにもご不安に感じるようであれば、メールなどでご連絡ください。
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