不妊とは「妊娠を希望して避妊せずに性交渉を行なっているにもかかわらず、1年以上妊娠しない」状態を言います。キャリア選択の多様化により、結婚、出産の年齢が遅くなることも不妊症の要因の一つです。不妊治療は、長引くことで、肉体的負担だけでなく、精神的、経済的にも負担になりかねません。不妊症では西洋医学的アプローチに漢方を併用することで、効果を上げることを期待できます。
不妊症の原因
不妊症の原因は、大きく分けて「受精できないことが原因」「精子・卵子の妊孕性が落ちたことが原因」「婦人科疾患による原因」が挙げられます。
・受精できないことが原因
不妊の原因の一つに受精障害が挙げられます。女性の体内で、精子と卵子が出会っているにもかかわらず、受精しない病態です。これには次のような原因が考えられます。
①排卵の問題:脳から卵子をつくる指令が届いていない状態です。多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、早発性卵巣不全などが挙げられます。
②卵管の問題:クラミジアなどの骨盤内感染症によって、卵管が閉塞、あるいは内腔が癒着している、卵管の動きが悪くなっていることがあります。それにより、卵子と精子が出会えずに、不妊症の原因になります。
③頸管・免疫の問題:子宮頸管粘液が少ないなどの子宮頸管粘液の性状の問題や、子宮頸管中に分泌される精子に対する抗体ができてしまうことによって精子が子宮頸管を通ることができないため、不妊症の原因となります。
④原因不明不妊:一般の不妊検査では原因を見つけることができなかった状態です。着床、受精、妊娠を維持することができくて不妊になります。
⑤男性側の問題:男性側が原因となっているものです。無精子症や精索静脈瘤などが挙げられます。
・精子・卵子の妊孕性が落ちたことが原因
臨床で多いのは加齢によるもので、受精卵が胚盤胞までいかないことや、染色体異常により着床できない、妊娠を継続することができなくなります。
・婦人科系疾患による原因
子宮内膜症や子宮筋腫などによる着床が妨げられることが原因となることもあります。
妊娠しやすいからだ作りをする漢方薬
西洋医学的な治療に加えて、漢方での治療を合わせることで妊娠しやすいからだ作りをすることができます。また、西洋医学的検査でこれと言った原因が見つからない場合でも、漢方による問診で、気血水のアンバランスを見つけ、バランスを整えることで妊娠しやすい体作りをしていくことができます。生活の不規則、食事の偏り、睡眠不足、ストレス過剰など、ライフスタイルも合わせて、妊娠しやすいからだ作りをしていくことができます。
また五臓のうち、生殖・発育・ホルモンバランスを担っている「腎」は、過労、大病、出産、睡眠不足、飲食の不摂生などにより力が減ってしまいます。「腎」の力を補う鹿の角や、亀の甲羅の漢方薬を用いることで、生命力を底上げしていくことができます。
漢方薬での周期療法
女性のリズムを陰陽の考え方を軸にして、月経周期を「月経期、卵胞期、排卵期、黄体期」という4つの時期に分けて考えます。周期に合わせて漢方を飲み分けることで、妊娠しやすいからだ作りをしていきます。
月経期:生理のときは、陽から陰に大きく転換する時、生理前と生理中では大きく体調が違うことからもわかるように、この時期は激しい変化が体の中で起こっています。生理の時期で大切なのは、生理の血液を完全に出しきってしまうことです。この時期は、血液のめぐりを良くして、子宮内膜の脱落を助ける漢方薬を使います。
卵胞期:生理の後から排卵までの時期は、卵胞が発育していく時期です。卵胞をしっかり成長させていくために、十分な「陰」潤いと「血」が不可欠な時期です。この時期には「陰」と「血」を養っていく漢方薬を使います。
排卵期:卵胞膜を破って卵子が飛び出す時期です。陰が陽に転換する時期です。排卵をスムーズにするために、気血も非常に活発に動きます。この時期は、体の動きを活発にするためいん、気や血を巡らせて排卵を促す時期で、巡りを良くする漢方薬を使います。
黄体期:排卵が起こり、抜け殻になった卵胞が黄体に変化する、黄体ホルモンにより体温が上昇する陽の時期になります。この黄体期は受精卵を着床しやすくする準備期間であるため、基本的には陽の気を補っていく漢方薬を使います。
授かりたい人におすすめしたいライフスタイル
①予定を詰めすぎず、ゆっくり、リラックスを心がける
②からだ作りの基礎となる肉や魚などのタンパク質をとる
③抗酸化作用のある食材をとってサビない体作りをする
ビタミンAを多く含むトマト、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑
④腎を養う黒米、わかめ、昆布などの海藻類、貝類など海由来のミ
⑤その日のうちに寝る(できれば成長ホルモンが分泌される10時
終わりに
自分はひょっとして子供を授からないのではないか・・・、なんで私は妊娠にないのだろう・・・など色々な不安やストレスを抱えている女性が多い不妊症ですが、希望を持って取り組むことができるようにサポートしてまいります。一人で抱えて我慢なさらず、まずはご相談ください。
<参照文献>
「今すぐ知りたい不妊治療 Q&A」久慈直昭・京野廣一著 医学書院
「女性医療のすべて」太田博明著 メディカルレビュー社