「わたし、そろそろ更年期かも。イライラ、怒りっぽくて、気分の波がしんどい。」そんな症状に漢方薬を５週間飲んで良くなった漢方症例をご紹介させてただきます。
仕事では甘えが許されなくなってくる40代。長年、関わった仕事の中で、責任感も育ってくる年代ではあります。社会的な責任に加え、子育て・介護などの精神的負担と、女性ホルモンバランス変化による心身の変化が合わさることで、更年期障害のような症状が見られる女性が多くいます。
40代女性 X年来店
＜主なお悩み＞
怒りやすくなった、イライラするし、胃が痛くなる。「わたし、そろそろ更年期かも。気分の波がしんどいんです。」
＜その他の症状＞
血液検査で貧血を指摘される。動悸や息切れはないけれども、疲れやすく、生理中になると頭が重たくなり頭痛がする。顔色、青白い。手足が冷える。疲れると手の指の付け根に痛みやだるさを感じる。睡眠時間 夜11時から7時まで。（問題なく眠れている）疲れを持ち直すために暴飲暴食する。食欲旺盛。食べるのが早い。排便２日に1回。汗をかきづらい。口の渇きを感じる。皮膚の乾燥あり。普段からイライラすることが多い。
X-8か月 子宮筋腫と診断される （5センチ）筋腫が大きくなりトイレが近くなる。（１、２時間に一回）寝起きに下腹部が重たく痛むことがある。
＜生理＞28日周期 7日間続く 出血量多い。（ナプキンを2時間ごとに変える。夜もナプキンを変える）生理前になると胸が張る、胃が痛くなる。生理前になるとイライラがひどくなる。
＜脈＞細弦 ／＜腹＞小腹不仁 胸脇苦満 心下硬満 ／＜舌＞辺尖紅 薄黄苔 るい痩 暗 扇動
＜体質＞血虚 肝気鬱血 気滞血瘀
処方 気の巡りを良くする処方
＜5週間後体調変化＞
「イライラがなくなり精神的に安定したため楽になった。」と本人から喜びの声。貧血症状改善され、顔色が良くなり、だるさが解消される。肌の乾燥状態も改善される。便通、排尿改善されている。胃痛も以前に比べると良い。生理痛は今回は軽かった。「疲れるとチョコレートを食べて動くようにしていたが、疲れづらくなったため、余計なものを食べなくなりダイエットにも繋がった。」とのこと。
子宮筋腫の症状もあるため、引き続き経過を観察しながら加療中です。
＜考察＞
社会的な責任感があって、子供の受験によるストレスが重なり、肋骨下に指を入れると硬くなっている状態でした。このことは、緊張やストレスによって横隔膜が過緊張の状態になって呼吸が浅くなっている状態の人によくみられます。「気」の巡りを良くする処方を中心に考えて、リラックスできるような処方を選びました。
下腹部の腹力がなく、血行不良、貧血があることから「地黄」を中心とした処方を考えました。補血するのに子宮筋腫があることから「当帰」は経過を見ながら進めていきました。その他、「川芎」「芍薬」などの生薬が配合されているもの、「枳実」などの胃の気を巡りを良くし胃痛を和らげるもの、「桔梗」「牛膝」などを使用した処方を考えていきました。
鑑別として、加味逍遙散合四物湯を考えられますが、ストレスによる胃の痛みを感じていることから、「柴胡」「芍薬」「枳実」「甘草」を中心とした処方で渡しました。結果、５週間でストレスによるイライラが解消されたと考えられます。
＜結語＞
仕事などの社会的責任と育児の両立や、子供の受験などが重なることによる心理的負担と女性ホルモンバランスの変化などが合わさることで更年期障害のような症状が見られることがあります。
元々、漢方医学の世界では「更年期障害」など病名を重視して治療するわけではなく、その人の症状や体質に合わせて漢方薬を選びます。イライラして怒りっぽくなるなどの症状は、普段のストレスが原因になっていることが多々あります。
ストレスから逃れることがなかなかできずに、イライラしながら過ごすことを当たり前だと受け止めている方も多いのですが、まずは「最近怒りっぽくなった」などの自分のサインを受け止めてみてください。
「未病」と言われる病気になる前の不調を整えていくことを漢方医学の得意とするところです。もし、お困りの症状がありましたら、一人で我慢していないで是非ご相談ください。
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